サイコロの目を操る

俺と姉貴は昔、微妙な能力があった。

それは、『サイコロの目を操れる』っていうやつなんだけど。

小三くらいの時かな。両親のいない日の夜だった。

姉貴が急に「いいこと教えてあげる」って言ってきて、

文房具屋かどっかで買ってきた五個セットのサイコロを出して来た。

「サイコロの目を自由に操れるようになるんだよ」って言われて、

丁度超能力とか流行ってた時期だったから、やってみることにしたんだよ。

やり方はぼんやりとしか覚えてないんだけど、確か、

・部屋を暗くする

・部屋の真ん中に一人で座る

・目を瞑ってサイコロを一つ握る

・操りたい目をイメージする

を、三十分だか一時間くらいやるだけだった気がする。


俺も姉貴も話半分みたいな感じだったけど、内心ちょっと『本当に出来るかも』とか思ってたと思う。

で、その儀式みたいなのを済ませて、実際にサイコロを振ってみる。

姉貴がイメージしたのは『6』で、俺は何故か『3』だった。

振る前に、一回サイコロを握ってギュッと念じる。

姉貴の出た目は6、俺は3。

すげえ!ってなって、何度も何度も念じながら振ったんだけど、

何度振っても姉貴は6で、俺は3が出続ける。

とにかく、その日は百発百中で、同じ目を出し続けた。

すげえ!ってなったけど、どこか『当たり前』みたいな感覚もあった。


その翌日、当然俺は学校で自慢するんだけど、ここでも九割五分同じ目を出し続けてインチキ扱いされた。

あと、目が3だから、しょぼすぎてなんとなく盛り上がらなかった。

それが悔しくて、その夜また同じ儀式をやって、目を増やした。

その後二日かけて残りの目も増やした。

おかげで3と5は完璧に操れる様になったんだけど、

残りはイメージに集中しきれなかったのか、八割くらいしか出せなかった。

姉貴はその辺しっかりしてるから、全部の目を九割以上の確率で操れてた。

とにかく、俺はそれを自慢しまくってたんだけど、

中学高校と進むにつれてサイコロを振るような遊びもしなくなって、自慢することもなくなった。

でも、時折振れば3と5は相変わらず操れたし、友人にも見せた


最後に振ってから随分経つけど、もう多分操れない気がする。

でも、俺と姉貴がサイコロの目を操れたのは事実だし、なんていうか、

そういう子供の頃特有の思い込みみたいなのが、常識をねじ曲げるみたいなのがあるんじゃないかな、と。

そんな思い出の話。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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