車飛ばして10分ぐらいの所に、『安い、だからあまり文句言うな』な感じの蕎麦屋があった。
そこがある日、『今日は本気で蕎麦を打ちます』という貼り紙を玄関に貼っていた。
それを人伝にメールで聞きつけた俺は、そのメール送ってきた奴ともう一人の計3人で、その本気の蕎麦を食いに行く事にした。
店に入り注文する。
出てきた蕎麦を食ったんだが、それがどういうわけか冗談抜きで本当に旨い。
今まで地味に色んな蕎麦の名店とやらに出入りしたりしたけど、そこの蕎麦すらも凌駕するほどに旨い。
『ぼくのかんがえたさいこうのおそば』をそのままリアルに抜き出したような、そんな人知を超えた旨さだった。
あまりの旨さに、蕎麦湯を持ってきた店の人を捉まえて、「こりゃ一体どういうことなんだ?」と聞いたら店長登場。
店長が言うには、「上手く言えないけど、今日はなんかいつもと違う感じがした。今日は旨い蕎麦が作れると思った」との事。
これからは食いたいときに最高の蕎麦が食えるなと、喜びと満足感を胸に、その日は帰途についた。
が、その日の夜のうちに、その店長は脳内出血で入院。
そのまま退院する事無く死亡してしまい、結局その店もその日を最後に閉店。今では月極駐車場に。
その破壊的な旨さの蕎麦は、『○○○(店名)の奇跡』という、一部ローカルな伝説で終わってしまった。
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