おれが小学3年生のときに、母の従姉が氏んだ。
母の従姉と言っても、氏亡当時は中学生だった。
俺はその家に行くと、よく面倒を見てもらっていた。俺はそのお姉さんによくなついていた。
葬式のとき、坊主がお経を読む。
もちろん、俺もそこで正座してお経を聴いていた。
ふと斜め後を向くと、俺と同じぐらいの歳の少年がいて、正座してお経を聴いていた。
奇妙だったのは、手をこすり合わせながら一心不乱に体を激しくくねらせ、
まるで踊っているかのようだったことだ。
俺はその姿を見て戦慄した。
一体こいつは何者なのか。
近所の子供なのかも知れない。仮にそうだとして、誰かの許可を得て入ってきているのだろうか。
第一、あの水俣病患者を思わせる、狂ったような激しい体のくねりは一体なんなんだ。
そんなことを考えながら、おれは視線を畳に落としてじっとしていた。
坊主のお経が終わったときに、もう一度振り返ってみると、やつは消えていた。
一体、やつは何者だったのだろう。
初めて人の死に接して、敬虔な気持ちになっている俺の心に、暗い影を残してやつは去って行った。
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