ヨモツヘグリ

昨日、裏高尾まで紅葉を見につうか、軽いハイキング気分で出かけてきたんだが、

そこの山道で、キノコ取りに来ているおっさんと出会ったんですよ。

で、俺も暇なもんだから、色々とそのおっさんに、

食えるキノコと食えないキノコだとか、アケビだとか教わっていると、

藪の中から浮浪者みたいな婆さんが出てきて、スジコ?みたいな木の実を差し出してきたんですよ。

何かすんごくニカニカしながら、「美味いから食ってみろ」的な事を繰り返し差し出してくるんで、ん??っと思いながらも、おっさんの知り合いかと思って受け取って振り向くと、

おっさんが能面みたいな無表情になってるのよ。

でもって婆さんはと言うと、満足したかのように藪の中に戻って行っちまったのよ。

そしたらその瞬間、おっさんが俺の受け取った木の実を掴んで反対の藪の中にポイっ。

??っと思いながら理由を聞くと、「ヨモツヘグリだ」っと言って黙りこんで、

それ以上聞ける雰囲気じゃなくなり、有無を言わさず山を降りる事になったんですよ。

おっさんが先にスタスタ歩いて、偶に俺がちゃんとついて来ているか確認するように振り返るって感じ。

その度に、何か言おう…っと思いながらも、何を言ったら良いか解らず無言のまま数十分。

その間した話といえば、何使って何処へ帰るのかとかその程度。

結局、一緒にバスに乗ったけど、やっぱり殆ど無言で高尾駅で挨拶だけして別れた。


その時は、あの婆が山の持ち主で、木の実=京都の料亭のぶぶ漬けみたいなものなのかなぁ…

つまり、山の持ち主からとっとと帰れというサインを受け取ったのか、と勝手に解釈したんだけど、

見た事無い木の実だったから気になって、今さっきおっさんが言っていた『ヨモツヘグリ』で検索かけたら、『黄泉戸契』とか出てきちゃったよ。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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