マネキンと野球部室

私の高校時代の話です。(まだ昭和でした)

野球部の部室に遊びに行ったとき、なぜかマネキンの頭部が無造作にゴロンとありました。

頭部のみで何故か髪がまばらに生えている。

「何で野球部に、これがある訳?」と部員(クラスメイト)に聞いたら、

平然と「帰ってくるんだ」と言ってました。

どこに捨てても翌朝には部室にあると言うのです。

そして「こいつ話せるんだぜ!」と、意味不明な事も付け加えました。

「…はぁ?」

部員はマネキンのまだらになってる髪をつかみ上げ、「挨拶しろ!」とマネキンに言っています。

はじめは私を担いでるのかと思いましたが、彼はマジでした。

もちろん、マネキンは話す訳がありません。

部員は「恥かかせやがって」と床に叩き付けました。

あまりの部員のマジぶりに、「いつもなら話すのか?」と聞いたところ、

「少し片言だけど話すんだ」と少々ご立腹の様子。

「本当なんだぜ」と訴えかけて来る彼に、私は否定出来なかった。

「・・・まぁ、部外の俺が居たからかも」と適当に合わせた。

「このマネキン何で髪がまばらなんだ?どうせだったらお前と同じく丸坊主にしたら」

と聞いたら、部員が「そいつバリカンで丸坊主にしたんだよ。まばらなのは伸びてきたんだ。みっともねえ頭。」

と、マネキンを蹴りながら平然と言う始末でした。


野球部に遊びに行ったのは、これが最初で最後でした。

永久欠番のマネキンに聞きたい。

なぜ君は野球部に帰るんだ?

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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