鳥居の生死

俺は田舎から越してきた社会人で、一人暮らししてる。

んで幼なじみの子がこないだ遊びに来たんだ。


その子は昔からちょっと特殊な子で、神社の鳥居をくぐるとその鳥居が ゛生きてる゛か゛死んでる゛かがわかるんだって。感覚らしく俺や他の友達にはさっぱりだったけどね。んで今でもその感覚あるのか聞いたらあるって言うから、 出掛けるついでに神社の側を通って鳥居くぐらせてみた 最も二カ所だけだけど、一つは゛死んでる゛らしかった。  どっちの神社も傍目には同じだから俺にはさっぱりだったんだけどな。 

そもそも゛生きてる゛か゛死んでる゛かわかっても、別に特別何かがわかるわけでもないそうな。

別にお互い特別なオカルト好きでもないから、その話題もその辺で買い物終えて帰ろうとしたんだ。


怖かったのはここから。  

俺のアパートって山の上なんだが、少し階段キツいけど近道があるからそこから行こうって誘って、その道にさしかかったところその子の足が止まった。ホントに急だった。その子だけに見えない壁があるんじゃないかって思ったほど。

どうしたのか聞いたら 「え?なんで…え…?」 って困惑しながらすごい不安げな表情でキョロキョロし始めた。「やだ…ここ、すごいやだ…」 って逃げるように後ずさった。どうしたんだよって再度聞いたら 「だってここ…鳥居がいる…」 って。

それを聞いて何だかゾクッとした。

鳥居が゛ある゛とか゛見える゛とかじゃなくて゛いる゛って言葉が妙にリアルだった。


結局、その道は使わずに家に帰った。

それからは別になにもない。その子も何事もなく帰った。冒頭にも書いたが俺自身は何も見てないし、感じてない。ただその子の嫌がる姿はマジに見えた。

普段感じる気配(?)みたいのが異様に強くて、それが見えないだけに余計に怖かったらしい。

俺は仕事でヘルパーやってるんだけど、爺ちゃんと道を歩いてる時に例の鳥居が゛いた゛という場所に近づいたので「昔ここに神社とかあったの?」って聞いたら、なんとあったらしい。

元々回りくどい話し方する爺ちゃんだけにいまいち要領を得なかったが、土砂災害かなんかで神社が崩れた事があり、今後の安全面も考えて場所を移して再建したんだとか。

幼なじみが嫌がったすぐそばに鳥居もあったらしい。もちろん、再建した神社はすぐ近所 。

そしてその神社の鳥居は先に幼なじみが゛死んでる゛と言っていたものだ。


今あるのに゛死んでる゛と言われた鳥居。今は存在しないのに゛いる゛と言われた過去の鳥居。

何の関係もない、偶然、たまたま、そんな程度のことだと思う。でもそういう場面に遭遇するとやっぱ興奮と言うか、ワクワクしてしまう。 


それともう一つ。

幼なじみは怯えながら゛上゛を見上げていた。

これが何を意味するのかは俺にはわからない。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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