逆さづり

二か月前まで働いていた病院での体験。 

足を折った幼い女の子が入院してて、その子がある病室の前を通るとすごく怯えるんですね。早く行こうよ、って。 

 気になって聞いてみても何にも言わないし放っておいたんですけど、あるときその子が真夜中にナースコールを押して来て、 「さかさづりが来る!さかさづりが!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!さかさづりが!」 って意味不明なことを叫び出すんです。

こちらもびっくりしてその子の病室に走って行くと、その子がワンワン泣きながら 「さかさづりが!さかさづりが!」 って言って、歩けないのに這いつくばって逃げようとするんですよ。

頭おかしくなったのかと思って、三人掛かりでその子をベッドに寝かせたんですが、その子が一際大きな声で 「あああああああああああ!!!さかさづりいぃぃい″!!!!」 って叫んで、気絶したんですよ。 

脈は早いけど、特に異常もないんで、取りあえず意味わかんないね、って職員三人で病室を出ようとしたんですが、そのとき、月明りに照らされた向い(窓の外)の病室に、プラプラ揺れる人間みたいな影があって。まさに「さかさづり」みたいな。  

でも窓の外は何もないし、何かが吊してあることももちろん無くて。自分たちも叫びながら病室を出ました。 

元職場のその病院は、7階建でまわりに草木もないし、女の子の病室は最上階だったので、なにか外にあるものの影では絶対にないんですよね。 

 あれが何なのかはわかりませんが、すごく怖かったです。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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