【蒐集家蒐集】死してから

その豪邸の玄関からまっすぐの所に女性の肖像画が掛けられていた。

派手ではなく、素朴そうな、言っては悪いがこの家にはあまり似合わない…


僕は今、とある蒐集家の家に来ている。

その豪邸からわかるように蒐集物もなんとも煌びやかな宝石やアクセサリーだった。

ネックレスに始まり、ティアラ、指輪、イヤリング、古い物から新しいものまで。

全て本物だと言う。

「これなんかダイヤモンドが散りばめられていてね。もちろん金もすべて本物さ」

「こっちはあの国の女王が持っていたものさ。」

逸話も豪華だ。目が眩む輝かしさ。


――何故、女性の物を?

「…ちょっとこっちの部屋に来てくれないか。」

そういって連れて行かれた部屋は寝室だった。

ドレスに靴、帽子、どれも女性の装飾品で壁が埋まっている。

アクセサリーも先ほどの部屋の比ではないぐらい豪華なものが並ぶ。

「…彼女さ。」

ベットの布団を剥ぐとそこには、

骸骨。

ドレスを着て、装飾品を付けた骸骨がいた。


「……違法じゃないぞ。許可は取っている。

彼女は僕の妻さ。玄関のホールで肖像画見ただろう。

彼女は地味で、遠慮深くてね。僕がプレゼントを渡しても貰ってくれなくて。

こんなに値打ちのあって良い物なのになぁ。価値のわからん女だったよ。」


「そこに興味を持ってしまって。何なら受け取るんだろうかと。

気が付いたら結婚していたよ。全く。どういう事なんだ。

…僕はもっと豪華で派手な子が好きなんだがなあ」


「彼女との生活はまぁ…幸せだったよ。

しかし、僕を残して死んでしまった。何様なんだろうな彼女は。

…彼女は質素でね。形見が少なかったんだ。だから骨を残したのさ」


彼は骸骨…彼女を起こした。

「しかしほら。死んでから、僕からの物を貰うようになったんだ。

どうだいこのネックレス。1000万は下らんぞ。

この絹のドレスは君が『受け取れない。他の子にあげて』なんて言った物だ。

誰かになんぞ渡すものか。」


彼女を支え、社交ダンスの真似をする。

「ほら。煌びやかな方がいいだろう?

輝いて、綺麗で、君は…美しかった。」


彼女を抱き寄せる。

「どうして、僕を置いて行ったんだ」


その時彼が流した涙は、どの装飾品よりも美しく見えた。


WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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