ホーリーマウンテン

欲にまみれた者たちよ。

聖人の様に禁欲をし、手に入れるのだ。


動物虐待注意、ショッキングな映像注意です。

アレハンドロ監督作品の中でも抜きん出てショッキングです。

ショッキングかつ美しい。

今回は宗教と、それを信仰している人々のリアル、そして聖人と人間というワードが強く出ているように感じました。

それと、もしかしたら監督の中で一番耐えがたく、また耐えるべき捉えているのは「性欲」なのかもしれません。観て頂ければわかるかも。


神を信仰しているなら、ある程度のモラルや禁止を守るはず。

しかし神を信じているにも関わらず、堕落する信者たち。

売女が出歩き買割れていき、街中で発情、性欲に溺れ、酒を浴び、いたずらに人や動物を殺す。

命の尊さなんのその!

しかし言うのです。「神様に祈りを!キリスト万歳!」

成功した売人は性を弄び、生産に明け暮れる。

武器にアート、軍人、死体、服…。

錬金術師は言う。

「選ばれし8人を連れてホーリーマウンテンに行き、賢者から不老不死の秘法を奪おう!」


選ばれた9人はどれも金持ちの欲望まみれ。

「まず全財産を燃やそう。金への執着を無くすのだ」

「山を登ろう。精神を鍛えるのだ」

「薬草を飲もう。体から綺麗にするのだ」

「髪を切ろう。色欲を捨てるのだ」

「禁」「捨てろ」「禁」「捨てろ」

さぁ、すべてを捨てた欲深い者は今この時何を思う?

明確で明白で明らかな自分の欲望が見えるだろう?

さぁ、人間たちよ。欲にまみれ、汚く、人間らしく生きようじゃないか。


主人公は最初は無鉄砲に今日を生きるために行動しており、その土地で崇められている錬金術師と出会います。それから「聖人から秘法を奪う為、俺達9人も聖人になるぞ!」という鶴の一声から修行をし、目的地間近で「お前は女の子と俺の暮らしていた場所へ住め」と言って返します。

主人公は「聖人」というマジックに掛り、明かされずに帰っていく。

逆に錬金術師は人間に成り下がり欲にまみれ暮す。

聖人という象徴を押し付けられたのかな?


主人公はキリストに似た青年?で、身体に障害のある友人と、街中で出会った猿を連れた売女が主人公の味方サイドの存在として出てきます。

友人は「心情的に邪魔な存在」として。

売女は「聖女ヴェロニカ的存在」として。

聖女ヴェロニカとはキリストがゴルゴダの丘を登っている時にアシストしてくれた女性です。

映画の最初には磔にされ、石を投げられる主人公が映され(反撃していましたが)、序盤で主人公の額を彼女が拭くシーンがあるのですがあれは聖書のワンシーンを元にしたのかと。

この映画は現代版の聖書です。新、新約聖書なんです。ニュータイプ。


また、注目すべきは過激な映像の数々です。

皮を剥いだ犬を十字架に張り付け、それを持って大行進。

インカ帝国VSスペイン軍の戦いを蛙とトカゲで再現。そして爆破し、インカのピラミットから血が流れ出す。

豚一頭を丸々ラードにしたものを塗りたくる。

睾丸摘出手術に殺戮。

狂暴化させられた兵士が槍に刺される訓練をする。

女性器を模したロボット。

書ききれません。


特に殺戮のシーンでは、血の代わりに体からハトや綺麗なビーズ、色とりどりな液体、

内臓の代わりにリボンなど、殺戮を行えば行うほど映像ではまるでパーティの様な鮮やかさが広がっていくのが印象的でした。

楽しいパーティと転がる死体。

頭をけがした少女は頭の飾りから赤い液体が噴射する。

直接的な傷、臓物の映像はありません。

しかしそれが想像を膨らましゾッとする。

プラスなイメージのあるリボンやビーズを使う事で、逆の発想をしたときにマイナスが何倍にもなって帰ってくるようです。


WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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