トイレの落書き

ある晩、彼は会社の同僚と酒を飲んだ。

お開きになって、帰りの道すがら。 どうも腹の調子がおかしい。駅から自宅に向かう途中、我慢できずに公園のトイレへ。 第一波の便通を終えて、待機中。 心持ち余裕ができて、あたりを見る。 

和式のかなり汚れたトイレ。 卑猥な落書き、そこかしこ。 

 彼は一つの書き込みに目を留めた。 

 「この女」 その後はペンで消されて読み取り不能。 ただ、携帯の番号は残っていた。 

いたずら電話とかかかってくるのか、などと思いながら、第二波をこなしていた。 

 腹痛が治まり、腰を挙げようとした瞬間。 自分の携帯が鳴ったそうだ。 着信には見覚えがない。 

あれっ?この番号は。 

 彼はびびった。 さっきまでしゃがんで見ていた落書き。 その番号がディスプレイに。 慌てて彼はトイレを飛び出したそうだ。 当然電話にはでなかった。 

 後日、彼は親しい同僚にその番号へ電話してもらった。 誰も出なかったそうだ。 

ただ、その同僚は翌日交通事故に巻き込まれた。 大怪我したそうです。 

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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