怖いシーサー

営業の仕事してた時、都内の繁華街のガード下を歩いてたら、ふと顔が冷たくなった。 風が吹いたというより、小さな冷たい空気の塊に顔を突っ込んでしまったって感じだった。 

その瞬間、その日の仕事の失敗や、数年前急死した父の死に目に会えなかったことや、 小学校の時クラスでイジメがあったのにとばっちりが怖くてただ傍観したこと、色んな哀しいことが思い出されて、 「あー死にたい死にたい死にたい早く死にたい」となった。 その直前までは「あーラーメンの匂い~お腹すいたな~」とか思ってたのに。 

 よし死のう!と思って、何故か足早に駅に向かっていた。 どんな死に方でもいいからとにかく死のう、早く早く、とりあえず電車に乗って、と走った。 


改札に着くと、改札手前で沖縄の物産展がやってて、大きな素焼きのシーサーと思われる物がレジのそばに鎮座してた。 

多分シーサーだよな、と思うほどやたらに怖い顔のシーサーで、 「あんな顔のシーサーってあるんだな」と急いでるのに目が離せなくなってしまった。 でも見てるうちにやっぱり普通のシーサーかな、と思い始めた。 

店員さんがコッチ見てるのに気付いてハッとしたら、なんだか急にお腹が空いて、 直帰予定だったので、物産展でしこたまソーキソバセット買って帰った。  

それ以降死にたいと思ったことは特にない。その前にもない。あの時だけ。 

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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