シーツおばけ

大学4年間、親戚の不動産屋の紹介で、繁華街の雑居ビル屋上のプレハブに住んでいた。  

プレハブなので冬寒く夏暑かったが、約18畳部屋でシャワー付、駅徒歩6分で月3万円。 

だが、変なものを月に一度か二度見るのに困った。 屋上の3分の1ぐらいがプレハブを占めていて、あとは給水タンクと庭みたいになってるのだが、 その庭みたいな空間に、夜中の2-3時になると変なものがユラユラ踊っている。 西洋の幽霊みたいな、ぼんやり光る白いシーツをかぶった人型のものが、フワフワするんだ。  屋上を浮かびながらゆっくり円を描く。


初めて見たのは、引っ越してから2週間ぐらいした夜のこと。 非常階段から不審者が忍び込んだのかと、バットを持って「こら!」と声をかけたが、 そいつはこっちを振り向くと、じわーっと消えていって終わり。 それで、この世のものじゃないとわかって、やっとビビったぐらい。 

 うちに泊まって見た友人も2人いる。 1人は、夜中にトイレに起きた時に見て、「どちらさん?」と声をかけたら消えた、と。 もう1人は、これが見たくて何度か遊びに来てて、4度めに見た。 

声をかけずに見てたら、ずーっと周ってて、友人がタバコに火を付けた瞬間に消えた。

ちっとも怖くはないんだけど、気持ち良いものじゃないんで、 屋上に粗塩ぶちまけてみたり、日本酒ぶちまけてみたり、色々したけれど効果なし。  

親戚の不動産屋に話してみたら、「だから、安いんだよ。でも、害はないだろ?」でおわり。 そのうち、出てくる周期が満月か新月の日だとわかったんで、その日は早寝してた。 


 飲み屋で知り合った霊感の強いオッサンに相談してみたら、  

「それがいるから、他のが来ない。ぐるぐるしてるだけで害がないなら放っておけ」

 実際、そのプレハブに住んでた4年間は、年に数回あった金縛りが一度もなかった。

 …と、驚くぐらいに怖くなくて、不思議っていうか奇妙っていうか、わけわかんない経験談です。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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