ヨガの瞑想

俺が小学生の頃、母はヨガのインストラクターだった。 例にもれず俺は母が大好きで、母の真似をしたくて「ヨガを教えて欲しい」と、よく母にせがんでいた。 

母はそのたび、「大きくなったらね」といって教えてくれなかった。 


どんなに頼んでも母は教えてくれなかったので、幼かった俺は自分で勉強することにした。 いくつか本を読んで俺の心を引き付けたものは、ヨガのポーズのやりかた等ではなく、 瞑想によりチャクラを開き、宇宙と一体化することだった。 

 最初はうまくいかなかったけど、 何回も繰り返すうちに心が真っ白のなり、周りと同化するような感覚に陥るようになった。 そうすると、俺は益々瞑想にはまっていき、暇があれば母に隠れて瞑想をしていた。 


ある日、いつもと同じように瞑想をしていると、 突然、自分の目を手元にあるコンパスで突きたい、という欲求に襲われた。  

絶対そんなことをしてはいけないといいう気持ちと、自分の目を付きたくてしょうがないという衝動が、 俺の体を駆け巡った。 しばらく葛藤を続けていたが、俺はとうとう欲求に負け、目を突いてしまった。まだ若干理性が残っていたのか、手元が狂って、コンパスは白目の部分に刺さった。  

激痛が走った。俺は泣き叫んだ。

けどまだ、目を突きたいという欲求は収まらない。 ふただび俺はコンパスをつかんで、突き刺そうとした。 そのとき、異常を感じ駆けつけた近所の人に俺は取り押さえられた。 そのまま俺は病院に連れて行かれ、何とか失明は免れた 数時間後、事情をきいた母が病院に駆けつけてきた。 

母は何故そんなことをしたのかと、俺を問い詰めた。 俺にも何故だかわからなかったが、瞑想をしていたら目を突きたくなったといううことを、泣きながら話した。 

母は驚いた顔をして、俺に語りかけた。 

「私が今までヨガを教えなかったのは、別に嫌がらせとかではないんよ。心が未熟な時に下手に瞑想をしてしまうと、何かに体が乗っ取られることがあるから」 と言った。 


どうやら、心を真っ白にすると、悪霊などが入りやすい状態になるらしい。 だから母は、心が未熟なうちは、俺にはヨガを教えないと決めていたそうだ。 

 あのときの恐怖が蘇るから、とっくに成人したいまでも、俺はヨガや瞑想をおこなっていない。  

皆さんも、瞑想する際は十分気をつけてください。  

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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