死霊は生霊を

高校の頃の話。

冬休みの最後の日の夕方に一人で家にいたら、友人3人(A,B,C)が訪ねてきた。

そのとき両親ともに旅行(というか弟のクラブの遠征の付き添い)で家にいなくて、

「なんなら泊まろうぜ」ということで泊めた。

明日が学校なので気が引けたけど、親友と言ってもいいぐらいの友人達だし、

どうせ始業式と提出物だすぐらいだろうからオールすることにした。


たしか夜の9時くらいまでビデオ(録画)のバラエティ見て、狭い風呂に4人一辺に入って、はしゃいでた。

そんで友人の中のだれかが「怖い話しようぜ」ということで電気を全て消し、豆電球一つ

だけつけて俺の寝室で円になった。

一人ずつ話していくのだが、やっぱり皆話下手で俺も含めて全然怖くない。

俺と友人2人は『ほんコワ』に出てたベタな話をしたんだが、一人だけ全然聞いた事のないような話をした。誰かは覚えていない。


要約すると、

・生き霊がいます

・死霊がいます

・死霊は生き霊を連れていきます

・付いて行った生き霊はやがて死霊になります

・また新たな生き霊を探します

とまぁ全然怖くないし、当時は「意味わからん」とさえ思った話。


で、夜が明けて眠いまま学校の準備。

友人2人は学校の用意を持ってきていないことに今さら気付き、一旦家へ。

もうAはなぜか学校の制服にすでに着替えてた。

「はやwww」と言ったら、意味深に「遅いよ・・・」とだけ小さく言ってたのを

よく覚えてる。


まぁ、とくに気にせず一緒に学校へ。

眠気でフラフラしてたらAが手を引き早足になる。

手を引いてるからか「気持ち悪」と思ったが、そんなことよりもAの必死さの方が気になってとにかく付いて行った。

すると目の前に、家に帰ったB,Cが手をふって「はやく来いよ!」と叫んでた。

俺も「だからか『遅いよ』なのか」と納得し、友人と一緒に走った。

・・・・


「コラァ!!」


怒号と共に、ごついおっさんに止められた。

「??え!??」となったが、ここで初めて気が付いた。

ここは踏切の目の前だった。


寝てないせいなのか、ほんとに「ここまで気付かないのはありえないだろ」と自分でも思うくらいまったく分からなかった。

しかも電車が走っている。


こんなことってあるのか?!と思ったが、

よく見たらAは電車が通る前に渡ったのか、いつの間にか向こう側でB,Cと学校に向かって

いる。

俺も電車が過ぎた後急いで付いて行ったが、全く止まってくれる気配がない。

しかも一言もしゃべってなかった。

「なんだよ。ちくしょう」と思いながら、そのまま学校に到着してしまった。

3人もそのまま教室に入っていく。

おれも次いで「なんだよお前らーふざけんなよなー。」と言いながら教室に入ったら、

3人の姿が無かった。

「あれ?」と思ってあたりを見回したが見当たらない。

一人で叫びながら入ったので、教室にいた女子数人から変な目で見られたの覚えてるw


そのまま始業のベルが鳴り、先生が入って来た。

そこで衝撃の事実を告げられた。


B,Cは熱を出して欠席するとの連絡が入ってたみたいなのだ。

さらに不思議なことに、先生の手にはよくドラマとかで使われる細長い花瓶を握っており、

Aの机にそれを置いて手を合わした。


自殺だったそうだ。

死因については当然のこと何も話さなかったが、友人は昨夜に亡くなっていたそう。

帰宅後、家に帰ると親が叱って来た。

「なんで濡れてないタオルを3枚も洗濯物にだすの?!洗濯する身にもなって!」と。


後日B,Cにそれとなく泊まった日の事を聞いてみたが、俺の家には来ていないという。

ちなみに二人は今でも元気に暮らしている。


ここでこの話は終わりなのだが、後に風のうわさで本当かどうかわからないし多分嘘だと思うが、

Aの残した遺書には『俺(名前)、ごめん』という文が半紙3枚ビッシリ埋め尽くされていたそうだ。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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