天使に会った

中学生の時、天使に会ったことがある。

実際は天使じゃないんだけど、それ以外いい呼び方もないので天使で。


その日の放課後、俺は友達と二人で南館の階段を上っていたんだ。

1階から2階へいく途中で、いつ来たのか小走りの女の子に追い抜かされた。

うちの制服を着てて、小柄でショートカットだったのを覚えてる。顔は見えなかった。

その女の子の後ろ姿を見た瞬間、なんと言ったらいいのかよくわからん感覚がぶわっときて、

幸福感のような、ああ幸せだなあって泣きたくなるような気持ちになったんだ。

友達の方を見ると、そいつも何が起きてるのかよく分かってない顔をしてて、

「今のなに?」って聞かれたから「知らん」と言うと、「天使だ!」って急に叫び出した。

二人してその女の子が消えてった曲がり角に走ったんだけど、誰もいなくて、

でも、そんな少しの間に姿が見えなくなるような長さの廊下じゃないし、

南館は音楽とか美術とかそういう教室ばっかりだったから、放課後には全部鍵がかけられてて、

どっかの教室に入ったってこともないはずなんだけど…

今思い出しても、不思議な体験だったなあと

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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