もう一人の俺

ある朝登校すると、女子の一人が「○○(俺の名前)ってA学院通ってんだぁ」と言ってきた。

A学院とは近所の進学塾。

自慢じゃないが俺は当時成績も良く、実家がド貧乏だった事もあり、塾通いなんかしていない。

「通ってねぇよ」と言うと、昨日の夕方、A学院から出てきた俺を見たという。

人違いだと言っても、顔も見たし手も振ってきたという。

俺の地元は田舎なんで学区内の皆顔見知りだし、確に間違われようが無い。

でもその日のその時間は、間違いなく家に居たんだが・・・


その数週間後、近所に新しい古本屋が出来たとあって、友人達と行ってみた。

すると店に入るなり、店の親父がブチギレて走ってきた。

他の友人に目もくれず、真っ直ぐ俺に向かってダッシュしてくる親父。

そして突然俺に向かって、

「良くまた来れたな!!よしっ学校に連絡してやるっ!!」

はあっ?とか思ってると、あれよあれよという間に裏の事務所に連れてかれた。

「何すんだよ!クソじじいっ!!」

すると店の親父の話では、前の週の店のオープン初日に俺が来店。漫画からエロ本から万引きして逃走したという。

「んな事してねえよっ!俺今日初めて来たんだぞ!」

と言っても信じてくれないし、友人達もだんだん疑いの眼差しに。


とりあえずと学校に連絡され、担任が登場する事になった。

担任登場し、平謝り。

しかし詳細を聞いている内に、担任も変な事に気付いた。

「11月7日ですか?あれ?○○(俺の名)。その日ってお前、工藤んちに居なかったか?」


そういえばその問題の日、俺と友人数人は工藤という友人の家で、文化祭の準備の話し合いをしていた。

親に行き先を告げて無かった友人の一人の母親が、「帰って来ない」と大騒ぎ。

連絡網を使って、担任が工藤の家に迎えに来た日だった。


「その万引き犯はこの子じゃないですね、時間的にも。私が証人です」

と担任が言ってくれたが、店の親父は納得行かず担任と大喧嘩。

「じゃあコレ見てみなさいよ!」と防犯ビデオ再生。

映ってるのは顔こそ白黒で分かりづらいが、まさしく俺のようだった。

その後、「まぁ今回だけは」と、お互い納得いかない感じでうやむやに。

しかし、もう一人の俺は、この先も更に登場しつづける。


中3の時1コ上の女の先輩から電話が、

「ねぇ、Kちゃんて娘知ってる?」

「いや、知らないすよ」

「そう。何か隣のクラスの娘で昨日初めて喋ったんだけど、あたしの出身中学言ったらさ。

 ○○君と一緒だ!ってアンタの名前言ってたんだよ」

「へぇ、その人ドコ中すか?」

「ドコ中も何も県外から来た娘だよ。何か、最近アンタから連絡無いって落ち込んでたよ?」

「知らねぇすよ(笑)可愛いんすか?その人」

「本当に知らないの?!嘘だったらアンタ最低だよ!」

「何で怒ってんすか!!本当に知らないっすよ!!」

「本人、先月アンタにナンパされて、ヤッちゃったって言ってるんだけど」

「はぁっ!!?」


もちろん身に覚えなんて無い。だから一回会わせてくれと言う事になった。

翌日、そのKという女に会った。

もちろん顔も見たこと無い、しかしタイプ。

Kは、俺の事めちゃくちゃ詳しかった。何でも知ってる。

しかも俺から直接聞いたといって泣きじゃくる。

俺じゃないと言っても聞かない聞かない。

何とかKをなだめて、「とりあえずこれから交流深めていいお友達に」という事になった。


そんでそれからKとどんどん仲良くなって、

俺が高校入った頃には『もう一人の俺』話も信じてくれるようにななり、友達以上恋人未満な関係になってきた。


すると俺が高1の夏、コンビニのバイトしてる時に変な事が。

『スタッフおすすめ!』ってカードに、自分のプリクラ貼って商品とかに付けてたんだけど、

その中の俺のプリクラだけ傷だらけに。

「誰だこんな事すんのは?」って外したら、カードの裏に爪でひっかいたような文字が。

『あのおんなはおれがさいしょだったろうが』


それから間も無く、Kから別れを告げられました。

理由を聞いたら、「あなた達には関わりたくない」と言われました。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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