阿修羅クイーン

中学2年の冬くらいの頃、良くなけなしの小遣いであるブランドのコスメをショップ買っていた。

いつもの様にそのお店で何買おうか迷ってたら、一人の女性店員さんが声かけてきて、

お勧めの商品だと言われてフレグランスを勧められた。


そのブランドのフレグランスって言うのが、

香水じゃなくて練り香、もしくはソリッドフレグランスって呼ばれる、所謂固形スティック状のフレグランスだった。

物珍しさに気になっていろいろ尋ねてみたら、

「これが今の限定商品なんです!阿修羅クイーン!」ってやたらテンション高くゴリ押してくる。

その阿修羅クイーンってのが、金と銀のラメが入ったピンクと赤の派手な着色をされたもの。

ただ奇抜なその名前や派手な色合いもそのブランドじゃ珍しくないんで、特に不信にも思わず試してみた。

香りはフルーツジュースの様な甘くてさっぱりした香りで、子供の私でも似合う香りだなと思いすぐ気に入った。

その頃の私にはちょっと高かったものの、結局店員さんのゴリ押しもあって購入。


早速使ってみると、フルーツの香りが周りに漂って良い感じで、友達にも評判が良かった。

しばらく使ってると突然ぶわあっとフルーツの香りが消えて、爽やかなミントな香りに変わる。

えっ?って思って戸惑いはしたものの、仕様なんだろうと思いなおして普通に過ごす事に。


しかし、このミントの香りになった途端、周りの人がやたら余所余所しい。

その上何だか妙に親切に接してくる。

ただ、優しくしたいとか可愛がりたいと言う様な感じでは無く、

何か私を怖がってる様な…圧力をかけられている様な感じ。

でも、やたらノート見せてくれたりとか物くれたり、身内だと小遣い沢山くれたりとか優しくされたんで、まぁいいかと思って使い続けてた。


そしたらいつの間にか、フルーツからミントの香りになるタイミングが判る様に、

さらには、自分の意志でミントの香りに変えられる様になった。

何だかそれを付けてる時は女王様気分だったけど、

それも1年くらい使い続けてたら無くなって来て、いつの間にか忘れてた。

丁度、久々に阿修羅クイーンを買ったくらいの季節にショップに寄ったんで、訪ねてみたら、

「阿修羅クイーン?…当店ではそう言ったフレグランスはありませんよ」

と言われてしまった。

でも確かにここで買ったもので、阿修羅クイーンの特徴を言ってみたけど、

そのブランドでソリッドフレグランスには、

ラメや二色のマーブルカラーのアレンジのものは、ずっと発売されてないらしい。

夢を見た気分になって、次第にこの話も忘れてたんだけど、

最近同窓会があって、そこで友達と話した時、


「昔さぁ、アンタにたまにご飯奢ってあげたりプレゼントしたりしてたじゃん?

 何かたまにアンタの背後に、顔と手が三つある全身赤の鬼みたいな奴が睨んでたんだ…

 そいつ見てると怖くなって、アンタに優しくしないとーってなってなって…自分でも良く解んなかったけど…」


その話を聞いたら、何だか不思議と納得がいくものがあった。

後から知って驚いたけど、要は顔と手が三つの赤い顔した鬼って……

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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