電話に出る何か

私の実家には電話に出る「何か」がいる

家に誰も居ないとき限定で、家の固定電話に電話をかけると「何か」が電話に出るそれが無言でもなくノイズでもなく、

ごく普通に「はい(苗字)です」と、若い男性(印象としては20前後ぐらい)の声で。

で、「何か」に用事を頼むとしっかりこなしていてくれる。知らない人が聞いたら留守番してる奴がいるでしょ?と思うくらい普通に「はい○○です。…ああ、わかった。じゃあ気をつけて」とか。


・お風呂沸かしておいて

・○○の電源切り忘れたから切っておいて

・何時になったら洗濯物を取り込んでおいて

などなど、敷地内限定かつ人に出会わないもの(宅配受け取って、などはNG)

私が生まれたころからはじまったのでかれこれ数十年になるんだけど、いまだに「何か」は家にいるらしい。

この間ためしに「母に○○と伝言お願い」と頼んだら、母が帰宅したらテーブルの上にメモ書きとして置かれていたそうな。

炊飯器のスイッチ入れておいて、とか。

冷凍庫から物を出しておいて、までならやってくれたことがある。

あんまり難しいことはできない様子。

はじめは「誰かの幽霊では?」となったんだが、該当するような若くして死んだ親戚なんかも全く居ない。

祖母が生きてたころに「いつもありがとうね、お土産かっていくけど何がいい?」と電話越しに聞いたら

「油揚げがいいな」と言ったことがあって、それからうちでは稲荷さんということで解釈した。

その後油揚げを用意し、電話で「テーブルの上に置いておいたからね、食べてね」と言うと

ちょっと照れくさそうに「ありがとう、いただきます」と返事が。

おいたら帰宅する頃には完食して食器も洗っておいてあったという。


出会いのきっかけの前からになるけど、うちの実家の裏手には山があって、

細いのぼり道を少しあがったところ(大人の足で5分もない程度)に小さな稲荷さんがある。(小さい祠)

私がまだ生まれて間もないころに風邪を引いたのか、高熱が何日か続いて、母親が寝ずの看病をしてくれていた。

疲れた母がほんの少しうとうとした1、2分の隙に私が消えた。

家内を探しても居ない。母と私以外で家に居たのは祖母のみ、でも祖母も見ていないと言う。

半狂乱で探すうち、家の裏手に回った母がかすかに子供の声を聞きつけて山へ行くと、稲荷さんの祠の前に私が寝ていた。そして熱がすっかり下がっていた。


まだハイハイどころか寝返りも打てない幼児がどうやってそこまで移動したのか、誰かが連れて行ったのか、結局分からずじまいだった。

時がたち私が幼稚園の頃、用事で家族全員が留守にしたことがあった。

私は幼稚園へ、そして家には近くに住む高校生の従兄弟が留守番に来てくれる手はず。

幼稚園が終わり、家へ電話すると男性の声が応答したので従兄弟だと思い、今から帰宅すると伝えると「おやつをテーブルに出しておくから気をつけて帰ってこい」と返事。


帰宅してみるとおやつの用意はしてあり、まだ熱いお茶まではいっている。だが、従兄弟どころか誰も居ない。

従兄弟は留守番の約束をすっかり忘れて遊びにいっていた。実家には誰も居なかったはず。

では、あの電話の声は誰なのか?これが初めての出会い体験。


最初は私が電話したとき限定だったので家族も半信半疑だったが、そのうち一人、また一人と同じ経験をした。

しばらくするうちに「悪さをするわけじゃなし、あまり追求してもかわいそう」と判断して誰も気にせず、

見えない家族が増えたという認識でおちついた。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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