「ここ温泉ホテルを現代風の隠れ家的温泉宿に立て替えて欲しいんです。」
工務店を営む私はこの依頼を受け、有名温泉地に来ていました。
「御宅に頼みたいのはちょっと変わったものでして、この宴会場を作り変えて欲しいんで す」と設計図を渡されました。
出口のない三重の回廊に囲まれた20畳の和室?
出られないし、入れない。窓もないので真っ暗だ。
「怪しさ満点だな…」
・・・・
解体作業は終わり、いよいよ建築作業です。
「ん?」
入口にガードマンがおり、依頼を受けたときにもらった通行証がないと入れないようになっていました。
「工事関係者以外は入れないようにガードマンを付けるって…一体どんな工事なんだ」
それにこんな部屋、何に使うんだろうか。
「あぁ、これ。これを燃やした灰を部屋の内壁に使う塗料に混ぜといて」
渡されたのはお札でした。
明らかに何かオカルト的なものを創ろうとしている…。
そしてその指示があった日から体調を崩す人が増えてきました。
日増しに強くなる何かの力に体が負けていくかのようです。
一週間後。内装は終了し、あとは壁をふさぐ作業です。
「一番大事な作業だと思って完璧にふさいでくれよ」
誰も口にはしませんでしたが前に立つだけで異様な圧力が伝わってきます。
まずは三重の廊下を通り抜け真ん中の空間へ。
そこには20畳の和室があり、その真ん中がふすまで遮られていました。
ふすまの向こうは…
そっと覗きます。
そこには日本人形が男女二組、御膳越しに向かい合う形で置いてありました。
何故真っ暗な和室でそんなはっきり見えたのかと言うと、人形の下からぼうっと光が当たっているように見えたんです。
作業終了後、監督に話を聞くとやはりこれは「開かずの間」の作成だったと教えてもらいました。
なんでもそこに福の神を住まわせ、その家に繁栄をもたらす為だそう。
貴重な経験でした。
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