6時半ですね

中学の修学旅行で、京都に行った。

女子の部屋は恋愛話で盛り上がり、寝たのは深夜2時半頃だった。

自分は枕が変わるとなかなか寝付けないタイプで、3時過ぎまで「眠いのに眠れない」状態だった。

やっとウトウトし始めた時、隣に寝ていた子がモゾモゾと動き出した。

「…、大丈夫…、…違うけど…」

ごにょごにょと寝言まで言い出した。あ~、また眠れなくなっちゃう!と耳を塞ごうとした瞬間 、「6時半ですね。はい、わかりました。気をつけます」

と、彼女がはっきりと言った。

寝言なのに、冷静でかしこまったような口調に意味もなく鳥肌が立った。


翌朝、6時に起床した私達は眠い目をこすりながら布団を畳んだり、着替えたりしていた。

今日の予定などを楽しくおしゃべりしていると、突然外から「ボンッ!!」と謎の爆音。

びっくりして部屋のカーテンを開けると、ホテルの前の大通りで車が炎上していた。

当然、私たちはパニックになり、教師の元へ走って行った。聞こえてくるサイレン、ホテルのアナウンス。

とりあえず落ち着こうと、友達の手を握る。昨夜寝言を言っていたあの子の手だ。

「…6時半、ぴったり。」

彼女はそう言ったあと、驚いている私を見て苦笑いした。


15年経った今でも友達だが、あの時の事を聞いてもただ微笑むばかりで何も答えてはくれない。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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