人間の風貌ではない

高校の時の話。

通学時、チャリで片道40分の道を行ってたんだがちょっと遅めの時間に出て行くと必ず同じ方面の部活の後輩と出くわしていた。

出くわすっていうかそいつはチャリをノンビリ漕いでる俺を追い抜かしながら律儀に「おはようございます」と挨拶してサーっと先に行くんだけど。

あまりにも律儀すぎる(縦社会において最低限なんだろうけど)上に俺自身堅苦しい上下関係とかあまり好きじゃなかったから何回か後輩に会うたびに挨拶しなくてもいいよと言ったがそれでもやはりそいつは変わらず律儀だった。


ある日、日直の仕事があった俺は珍しく朝早い時間に登校。チャリを漕いでると後ろからシャーっと自転車の音。その自転車の主は部活の朝練かあるいは俺と同じで日直か。

そんなことを考えていると後輩の声で「おはようございます」と聞こえてきた。あれ?あいつ早いな。すげえ偶然だな。そう思って俺も挨拶を返そうとチラッと横を見る。


…後輩じゃなかった。

挨拶してきたそいつは人間の風貌をしていなかった。顔のパーツ全てがひよこ豆並に小さく、気持ち悪いほどのおちょぼ口。おまけに首を180度左右にグルグル回している。

でも服装はうちの学校の制服。


俺は驚きと恐怖を通り越して無言のパニック状態に。目の前に信号付きの横断歩道が迫っているのにもギリギリまで気付かず、なんとかブレーキ。危うく轢かれかけた。

そしてそいつは、信号無視をして学校とは別の方面にチャリを走らせて行ってしまった。


この話は後輩含めた他の奴に話したところで真実に辿り着く答えが得られないのは分かっていたので基本的に怖い話を求められる時とか以外は話してない。

ただ先日、友人の家で読んだノンフィクションを自称するとあるホラー漫画(タイトル忘れた)にその化け物そっくりの幽霊話が載ってた。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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