墓場のルール

私の家のまわりは田畑や雑木林ばかりで、道路も舗装されていない田舎の子でした。 家のそばにある墓場で近所の子とよく遊んでいたんですが、まあ罰当たりなガキどもですわな。 卒塔婆でちゃんばらしたりとかね。 

お寺がそばにない墓場で、とくに怒られたりはしなかったんですが、親からこれだけは守れと言われたことがありました。 

「墓場では転ぶな。墓場で転んだら片足を置いていかなければいけない。そうしないと罰が当たる」と。 でもね、ガキが遊ぶ(暴れるという表現のほうがあってるかな)のですから絶対、間違いなく転びますよ。  

そんな時は、足を切るわけにはいきませんから、代わりに靴を片方脱いで墓場に置いて家に帰ります。 で、次の日に「昨日はごめんなさい」と墓場であやまって、置いておいた靴を持ち帰るわけです。 

ある日、いつものように近所のクソガキどもと墓場で遊んでいたんですよ。鬼ごっこかなんかしていてね。 全員がもつれあって、墓石にぶつかって、派手にすっ転んだわけです。 で、いつものように靴を片方脱いで置いていくことにしたんですが、 1人の子(Y君としときます)が、 買ってもらったばかりのキャラクターの絵が描いてある靴(ウルトラマンだったかな?)だったんで、 置いていきたくなかったんでしょうね。靴を置かずに帰ろうとした。 

みんな「片足置いてかなきゃいけないんだぞ!きっと足がもげちゃうぞ!」なんて言ってからかってた。 でもね、本気で罰が当たるとは思っていなっかたんです。 だから、Y君が靴を置かずに帰るのを止めはしませんでした。


しばらくして、私は学校帰りだったんでしょうか、 道路の向こうに母親がいるのに気づきまして、ちょうど駄菓子屋の前でしたね。 お菓子買ってもらおうと、道路を渡り始めたんです。 すると、道路の向こうで母親がすごい勢いで手を振ってるんです。 何だろうと思ったら、景色がいきなりぐるぐる回ってわけわからなくなって。 トラックに引っ掛けられたそうです。 道路の真ん中で私はぺったり座っていたそうです。 

覚えてないんですよ、その時のこと。 ブワーって走ってきたトラックに引っ掛けられて、道路の真ん中でくるくる回って、かすり傷ひとつありませんでした。 墓場で遊んだんで罰が当たったのか、ちゃんと靴を置いていったから無傷ですんだのかとか、色々考えてました。

次の日、学校でみんなに、事故にあったけど怪我しなかった話をすると、 みんな何かしら危ない目にあっていたのがわかりました。 誰も怪我しなかったので、気にしていなっかたみたいです。 

ただ、靴を置かずに帰った子、Y君、学校に来ていないんです。 遊びにも来なくなったしおかしいなって思っていたら、いつの間にか転校していました。 何年かしてもう中学生になってましたが、Y君が転校というかいなくなった理由を知りました。 

Y君、家の玄関で転んで頭を打って、右だか左だか聞いていないんですが、半身不随になったんだそうです。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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