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5年前の事。

ある夜、仕事が立て込んでしまい夜中に帰ることになった。


人気はないが電灯はある。

前にも何回かこの時間にこの道を歩く事があるので別段怖くもない。

いつも通りだ。帰ったらシャワー浴びて寝よう。

そう思いながら帰っていた。


突然。本当に突然俺を「恐怖」が襲った。

なにを見たわけでもない。

ブワァッと地獄の底から込み上げてくるような恐怖。

なんだ?!とパニックになっているとその恐怖が真後ろに来た。

背中に張り付いてくる恐怖。


見てはいけない。


そう確信しているのに、何故か勝手に首が向く。

駄目だ・・・。抵抗するも身体がいう事を聞かない。

あぁ、自分の肩が見える。

肩越しに何か長い髪と赤い服が見える。


「それ以上は駄目だよ」

驚いて前に目を向けると知らないおばさんが俺の腕を掴んでいた。

さっきまで俺を取り囲んでいたあの恐怖が無くなった。

「あっ!えっ!」

パッと後ろを振り向くもさっきの赤い服と長髪の何かはいない。

「えっ」

おばさんに話を聞こうと前を向くも、おばさんも居なくなっていた。

「えっ」

前も後ろも誰もいない。


隠れられる場所も無いし、第一隠れる理由もないだろう。

しかも今夜の1時だ。なぜおばさんが居る。

しかし守ってくれたのは確か。


後日談は特にない。

あそこで昔殺人が!とかも無いし、事故が起きる場所でもない。

あそこには何もないんだ。

あのおばさんは実は自分の亡くなった親戚だった!という事も無い。

なによりあのおばさんが俺の顔を覗き込んだ時に、俺に向けた「悪意」の籠った目が忘れられない。

あの恐怖の本体はあのおばさんだったんじゃないか。

確実に人間ではなかったし、あれを幽霊だとするならばヤバイタイプの悪霊だ。

でもおばさんの服は花柄だった。

あのおばさんは何者で、俺は何に挟まれていたんだろうか。




WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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