回るサラリーマン

去年の12月半ば頃、忘年会シーズンの時。

その日は、私の会社でも忘年会があり、終電に乗った。

帰宅ラッシュとは逆方向だったので車内はガラガラ。


しばらくすると、車両に私と、

くたびれたサラリーマンの二人だけになった。

そのサラリーマンは、私から一番離れた両端のシートに座って居眠りしていた。

相当疲れてるか、酔っ払ってたんだろう。

私もちょっと眠かったので目を閉じた。


5~6秒経ってふと目を開けると、

サラリーマンがシート一列分だけ私の方に、

移動しているように思えた。

特に気になることもなかったので、私はまた目を閉じる。

数秒後、何か嫌な感じがして再び目を開いた。

今度は、さらに一列こっちの方へ移動していた。


スリでもやらかしたら、とっ捕まえて駅員に引き渡してやろうと思い私は半目を開けて寝たフリをしてみる。


案の定、サラリーマンは俺が目を閉じたのを確認し、立ち上がった。

こっちへ来るか?と思ったが、そうじゃなかった。


サラリーマンは、そのまま車両の真ん中でクルクル回り始めたんだ。

回りながら、

「騙されないぞ~騙されないぞ~狸寝入りなんかに騙されないぞ~」

とつぶやき始めた。

さすがに怖くなって、そのまま寝たフリをし続けて、次の停車駅で逃げるように電車を降りた。


サラリーマンは、追っては来なかった。

それ以来、終電には乗らないようにしています。

WUNDERKAMMER

名作は、名作と呼ばれる理由があるはず。 それを求めて映画や本を観ています。 あとは奇妙なもの、怖い話や自分が好きなものをここに集めています。

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